チケット不正転売禁止法とは何か?
2019年6月14日により,「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」(略称:チケット不正転売禁止法)が施行されます。
真っ先に疑問に思うのが,
といったところではないでしょうか。
一次情報を求める場合は,文化庁サイトを読めばいいと思いますが,これは法律に慣れていない人には極めて難解です。
チケットの高額転売が禁止に! ~チケット不正転売禁止法 6月14日スタート|政府広報オンライン
政府広報オンラインの記事はイラスト入りで,かなり一般向けに書かれていますので,こちらを参考にするのが良さそうです。それでもまだカタいですが…。
本記事では,政府広報オンラインの記事よりもさらに一般市民の目線で「チケット不正転売禁止法」について解説をしていきたいと思います。
チケット不正転売禁止法の対象になるのは「特定興行入場券=記名チケット」だけ
まず確認しておきたいのは,チケット不正転売禁止法の対象になるのは「特定興行入場券=記名チケット」だけだということです。
上記のイラストのような「ダフ屋(語源は「札(ふだ)屋」)は現在ではなかなかお目にかかりませんが,いまはネットオークションやSNSでのチケット不正転売が横行しています。
2020年東京オリンピックを見据えて,チケットにだけ法律で規制をかけたというわけです。
チケット不正転売禁止法で禁止される行為は二つ
チケット不正転売禁止法で禁止される行為は二つです(日本国内で発売されたチケットに限る)。
- 特定興行入場券(チケット)を不正転売すること
- 特定興行入場券(チケット)の不正転売を目的として特定興行入場券を譲り受けること
法律名の通り,不正転売が禁止の対象になるのですが,「不正転売を目的としてチケットをもらうこと」も禁止の対象ですのでご注意ください。
あと,「不正転売(定価以上での販売)された特定興行入場券(チケット)を購入すること」は,この法律では禁止されていません。ただ,詐欺や入場拒否などのトラブルがあるので,慎重になった方がよいと思います。
以下,この法律を理解するために用語の確認をしていきます。
特定興行入場券とは?
「特定興行入場券(QRコードやICカードを入場券とする場合を含む)」とは,下記の通りです。
興行入場券(それを提示することにより興行を行う場所に入場することができる証票)であって、不特定又は多数の者に販売され、かつ、
- 興行主等が、販売時に、興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨を明示し、かつ、その旨を当該入場券の券面等に表示し
- 興行が行われる特定の日時及び場所並びに入場資格者又は座席が指定され
- 興行主等が、販売時に、入場資格者又は購入者の氏名及び連絡先を確認する措置を講じ、かつ、その旨を当該入場券の券面等に表示しているもの
カ,カタい。カタすぎる。もう少し柔らかく言うと,
- 主催者が転売禁止と明記している
- チケットに名前がある or 座席指定がある
- 買ったときに,購入者の氏名や連絡先を確認している
ということになります。
逆に言えば,転売禁止と書いていないチケットや,招待券などの無料配布チケット,購入時に氏名や連絡先の確認のないチケットは,チケット不正転売禁止法の対象外となります。
不正転売とは?
そもそも「不正転売」とは一般的な転売とどう違うのでしょうか?
特定興行入場券の不正転売
興行主の事前の同意を得ない特定興行入場券の業として行う有償譲渡であって、興行主等の当該特定興行入場券の販売価格を超える価格をその販売価格とするもの
チケット不正転売禁止法には上記のように書かれています。
「業として行う」の解釈
まず,「業として行う」という点ですが,「反復継続して事業の遂行とみることができる」という解釈が一般的です。つまり業者はもちろん,個人でも転売を生業にしているような人は「業として」に当たると解釈されます。
この点について,陸マイラーかつ弁護士である陸弁さん(@rickbenflyer)に聞いてみました。
なるほど…。販売実績ではなく,あくまで「意思」の有無なんですね。「都合が悪くなって行けなくなった」と言い訳をしても,手元に大量に同じコンサートのチケットがあるとNGというわけです。
「販売価格を超える価格」の解釈:送料はどうなる?
次は「販売価格を超える価格」の解釈についてです。まず,確認しておきたいのは,定価での有償譲渡は違法ではないという点です。
チケット不正転売禁止法で禁止されている「不正転売」とは,「興行主等の当該特定興行入場券の販売価格を超える価格をその販売価格とするもの」なので,定価未満の場合は胃禁止されていません。
したがって,ネットオークションやSNSでのやりとりでも定価未満の場合は規制の対象外です。
ただし,ここで気になるのは「送料」です。例えば,
という疑問です。陸弁さんに聞いてみたところ,「送料は「販売価格」に含まれないので基本的に問題ない」ということでした。ただし,
という指摘もいただきました。確かにメルカリなどのネットオークションで,送料名目で実質的に販売価格を積み増ししている出品を見かけることがあります。こういう場合はNGというわけですね。
違反したときの罰則は?
チケット不正転売禁止法に違反(記名チケット&定価以上での販売&業として)した場合には,「1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金またはその両方」が科せられます。
決して軽い罪ではありませんので,この機会によく確認しておきましょう。
購入者が気をつけるべきことは?
先にも述べましたが,チケット不正転売禁止法では「不正転売(定価以上での販売)された特定興行入場券(チケット)を購入すること」は,この法律では禁止されていません。
ただし,詐欺(偽造やお金を振り込んで送ってこない)や入場拒否(身分証との不一致)などのトラブルがあるので,SNSなどでのやりとりはくれぐれも慎重にした方がよいと思います。
また,万が一公演中止や延期になった場合,転売されたチケットだと補償されない可能性があります。この点もご注意ください。
基本的にチケットは正規のルートで買うことをオススメします。
もし休養や急病でいけなくなった場合は,主催者が認める公式リセールサイトを使いましょう。東京オリンピックチケットについても,公式リセールサイトが立ち上がる予定です。
まとめ
チケット不正転売禁止法は,もう少しわかりやすく言うと「チケット高額転売禁止法」ということになるでしょう。
- 主催者が転売禁止と明記しているチケットを
- 定価以上の高額な価格で
- 「業として」反復継続的にネットなどで販売する
という条件を満たした場合に違法と判断されます。
東京オリンピックのチケットをかなり強く意識した法律ですが,ジャニーズなどチケットが転売で高騰しやすいものなどにも効果はあるでしょう。
しかし,チケット不正転売禁止法施行後も「当該のチケットが法律規制対象かどうやって判断するか」や「高額転売の証明はどうするか」,「「業として」の認定基準」など,様々な問題があり,そう簡単な話ではないとも考えられます。
チケット不正転売禁止法施行後に判例が積み重ねられていくにつれ,運用上の実際の「基準」が見えてくると思われます。
しかし,こうした法律が施行されたということを知っておくことは,SNSなどで意図せずに法律違反をおこなわないようにするために大切ではないでしょうか。
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メルカリなどの販売で送料は問題ないとのことでしたがメルカリで販売する際にかかる手数料10%を上乗せしてもいいのかダメなのかがわかりません。
kokoさま
コメントありがとうございます。厳密に言えば手数料は「上乗せ」に当たると思われます。メルカリを使うか使わないかは売り主の選択なので,それを買い主に転嫁して上乗せするのは「定価を上回る販売価格」に当たると思われます。
ただ,そこまで厳密に法を適用してくるかどうかは,これからの運用事例をみないとわかりませんが…。