FREETEL(フリーテル)に対する消費者庁の行政処分(措置命令)についての考察




消費者庁がFREETEL(フリーテル)に景品表示法違反と行政処分

2017年4月21日に消費者庁はFREETEL(フリーテル)に対して,「プラスワン・マーケティング株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令」をおこないました。全文は下記の通り,pdfで26ページに及びます。

http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_170421_0001.pdf

措置命令の対象は主に二種類です。

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  • 「業界最速の通信速度」及び「SIM販売シェアNo.1」の裏付けとなる合理的根拠がなかった
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  • 「AppStore」、「LINE」、「WeChat」、「WhatsApp」及び「Pokemon GO」の文字並びに本件5アプリケーションのアイコン画像を付記しつつ「FREETELなら各種SNS利用時のデータ通信料が無料!!」 などの裏付けとなる合理的根拠がなかった

上記2点について,フリーテルは消費者庁に返答をしましたが,合理的根拠が認められず,今回の景品表示法に基づく行政処分となりました。

フリーテルといえば,本ブログでも取り上げた「スマートコミコミ+」の問題が大きい気がいますが,今回の行政処分の対象となった景品表示法違反は平成28年度12月の事例が取り上げられているため,「スマートコミコミ+」は対象となっていないようです。

この「スマートコミコミ+」の問題点については,下記の記事をご参照いただければ幸いです。

 

「不当景品類及び不当表示防止法」違反

 今回のフリーテルの行政処分は「不当景品類及び不当表示防止法」違反となります。

(目的)
第一条 この法律は、商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的とする。

http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_170421_0001.pdf

というわけで,ざっくばらんにいうと「テキトーなことを言って,消費者をだましたらダメよ」ということです。

さらに,景品表示法における優良誤認(無理に良いモノに見せようとすること)には,「優良誤認表示(5条1号)」,「有利誤認表示(5条2号)」,「商品・サービスの取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがあると認められ内閣総理大臣が指定する表示(5条3号)」がありますが, 今回のフリーテルへの行政処分では,5条1号と2号について行政処分が下されました(強調部は筆者による)。

不当景品類及び不当表示防止法第7条第1項の規定に基づく措置命令

貴社は、貴社が供給する「FREETEL SIM」と称する移動体通信役務(スマートフォン端末と一体的に供給する場合を含む。以下「本件役務」という。)の取引について、不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号。以下「景品表示法」という。)第5条の規定により禁止されている同条第1号又は第2号に該当する不当な表示を行って
いたので、同法第7条第1項の規定に基づき、次のとおり命令する。

http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_170421_0001.pdf

優良誤認表示(5条1号)違反

簡単に言えば,「優良誤認表示(5条1号)」については,合理的な根拠もないのに(フリーテルによる反論はあり),自社を著しく優良な会社だと消費者に誤認させて顧客を集めていただろうということに対する違反です。

「業界最速の通信速度」及び「SIM販売シェアNo.1」の裏付けとなる合理的根拠がなかった

要は上記に対する指導ですね。

有利誤認表示(5条2号)違反

次に,「有利誤認表示(5条2号)」については,合理的な根拠もないのに,表示したアプリサービスがすべて通信料無料になりますよと消費者に誤認させて顧客を集めていただろうということに対する違反です。

「AppStore」、「LINE」、「WeChat」、「WhatsApp」及び「Pokemon GO」の文字並びに本件5アプリケーションのアイコン画像を付記しつつ「FREETELなら各種SNS利用時のデータ通信料が無料!!」 などの裏付けとなる合理的根拠がなかった

 要は上記に対する指導ですね。

 

FREETEL(フリーテル)に対する行政処分(措置命令)文書

事件に対する概要はこれで概ねの説明をしましたが,FREETEL(フリーテル)を経営するプラスワン・マーケティング株式会社への行政処分(措置命令)文書について,もう少し詳しく検討してみます。

http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_170421_0001.pdf

1 命令の内容
(1) 貴社は、貴社が一般消費者に提供する本件役務に係る表示に関して、次に掲げる事項を速やかに一般消費者に周知徹底しなければならない。この周知徹底の方法については、あらかじめ、消費者庁長官の承認を受けなければならない。

(2) 貴社は、今後、本件役務又はこれと同種の役務の取引に関し、(中略)必要な措置を講じ、これを貴社の役員及び従業員に周知徹底しなければならない。

(3) 貴社は、今後、本件役務又はこれと同種の役務の取引に関し
ア 表示の裏付けとなる合理的な根拠をあらかじめ有することなく、前記(1)ア(ア)及び(イ)記載の表示と同様の表示をしてはならない。
イ 前記(1)イ記載の表示と同様の表示を行うことにより、当該役務の取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示をしてはならない。

(4) 貴社は、前記(1)に基づいて行った周知徹底及び前記(2)に基づいてとった措置について、速やかに文書をもって消費者庁長官に報告しなければならない。

かなり責められてますね。内容は先も挙げた二点「他社より通信速度が速い」「各アプリの通信料が無料になる」という点についての追求です。

ただし,この文書では,消費者庁がFREETEL(フリーテル)を経営するプラスワン・マーケティング株式会社のおこなってきた経営の事実を詳細に調べ上げた上で,上記の行政処分(措置命令)をおこなっています。

繰り返しにはなりますが,FREETEL(フリーテル)については,「スマートコミコミ+」の横暴なSIMフリー端末に対する割賦価格設定こそ,消費者庁に切り込んで欲しいと思います。この点は,時期的にも官庁としてはもう少し時間を要するのかもしれません。詳しくは下記の記事をどうぞ。

 

FREETEL(フリーテル)の反論

この消費者庁による行政処分(措置命令)について,FREETEL(フリーテル)はいち早く「当社ウェブサイト上の表示に関する消費者庁からの措置命令について」という反論を公式サイト上にアップしています。

当社ウェブサイト上の表示に関する消費者庁からの措置命令について | FREETEL(フリーテル)

その内容は下記の通りです。

1「SIM販売シェアにNo.1」の表記に関し、株式会社ヨドバシカメラにおける販売シェアである旨の注記を行わなかったこと

なるほど。No.1表記は株式会社ヨドバシカメラにおける販売シェアだと言うことを書くのをつい忘れていたということだったのですね。それは仕方ないですね。うっかりは誰でもあります…で本当に良いのでしょうか?ヨドバシカメラのランキングは,消費者にとって本当に公平な情報なのでしょうか。

2「『業界最速』の通信速度」の表記に関し、平日昼間12時台における比較であること等の注記を行なっていなかったこと及び、速度比較グラフにおいて体裁を整えるべく出所元から転記した際に誤記があったこと

なるほど。時間限定という注記の(うっかり)書き忘れがあり,かつ転記の際に誤記があったと…。なにごとも誤記ですめば,ありがたいですね。実験条件を書かない実験ってどんな意味が? 理科教育,科学教育の根本を揺るがしそうです。

3「LINEのデータ通信料無料」等、対象アプリケーション利用時のデータ通信料非課金の表記に関し、データ通信の一部が課金対象となる点について数か所注記漏れがあったこと

なるほど。数カ所注記漏れがあったと。FREETEL(フリーテル)を信じて,データ通信料非課金のつもりで大量にデータ通信を使用した消費者に対する救済措置はあるのでしょうか。

全般的にFREETEL(フリーテル)を信頼できるMVNO(格安SIM)とみなすには,だいぶ抵抗のある返答です。

 

まとめ

MVNO(格安SIM)がスマホ維持費の軽減に貢献するというのは,本当にその通りだと思います。ただ,今回のような事件があると,MVNO(格安SIM)は信用できないという空気になるのも納得できます。

この辺はせめぎ合いで,世界標準に比すれば,かなり高額な月額維持費をカルテル的にせしめるMNO(ドコモ,au,ソフトバンク)に対し,MVNO(格安SIM)に頑張ってもらわないと,日本の庶民のデータ通信費は安くならないのです。

しかし,こういう問題が起こると,それが鈍るという図式です。何か神の力が働いているのではないかと思いってしまいますが,せめて本ブログを愛読いただいている賢い消費者のみなさまは,割高なMNO(ドコモ,au,ソフトバンク)だけでなく,お得になるMVNO(格安SIM)も,冷静に検討して生活費圧縮をなさってください。

2017年12月に民事再生手続き開始の申し立て

追記です。2017年12月4日にFREETEL(プラスワン・マーケティング株式会社)は,民事再生手続き開始の申し立てをおこないました。詳しくは上記の記事をどうぞ。











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